輸送戦記 第7話 魔法使いであり魔法使いではない
「君は魔法使いになった」
「は？」
普通はそう言う。いきなり『君は魔法使いになった』なんて言われたら絶対そう言うぞ。
「えーと姉…ルローネ先生、ミラン先生、詳しい説明をお願いしたいのですけど･･･」
「と言ってもねぇ、ミラン」
「わたしたちも首をかしげているのよねぇ」
何だかんだで色々話を聞いてまとめると
1.草壁は魔法使いになった。証拠に魔力が感知される。
2.ただし普通とはかなり違う。
3.使用可能と推測されるのはマイナーな補助魔法。
4.ただし通常と違って常に補助魔法が維持されている。自力変更は不能。
5.感覚系補助に50％。肉体系補助に20％。制御系補助に30％。の魔力が割り振られている。
6.5の影響で他の魔法が使えない「魔法が使えない魔法使い」になっている。
らしい。
「…えーとミラン先生。その話を総合すると肉体強化に特化した肉体派魔法使いでいーのですか？」
「そーなるのよねぇ。あんまり例がないんだけど」
「攻撃・防御魔法が一切使えず、エンチャント系魔法がかなり制御できないダークシュナイダーみたいなもん」
筋肉ムキムキで最凶魔法使いで女タラシなアレ？
「何で姉御がそのマンガを知ってるんですか」
「まーそれはそれだ。別に殴りアコライトや殴りマジシャンでもいいぞ」
さすが姉御。MMOも範囲内ですか…ってそれ以前に回線ないから遊べないだろ…常識的に考えて…誰だよ姉御にこんなオタ知識を教えた奴。
「少なくとも～初心者にありがちな魔法暴発は無いから安心だね～」
「でもミラン先生、肉体補助の暴走っつーのも恐ろしい気がしますが」
「で、魔力の50％を感覚に突っ込んでいるから急に夜目が利いたり、距離が分かったり、耳が良く
なったりした訳ですね、ミランちゃん」
「そうだよ～肉体補助に20％が振ってあるから体力も上がっているね～」
「だから30㎏はある弾薬箱を軽々ブン回せたワケですか。まーパワーアップできて死ぬ確率は下がったから良いか」
「だが草壁、喜べないかもしれないぞ」
「なぜですか？姉御」
「パワーアップされたから激戦区に放り込まれたりして」
3人とも沈黙。わ、笑えない。ありがちすぎる。
「まぁ～ともかく、ルローネ」
「うむ、そうだな、ミラン」
そうして2人は声を合わせた。
「我が倶楽部へようこそ」
好き好んで入会した訳じゃないぞコラ。
「他にも～入会者と言うか覚醒した人がいるかもしれないから～、日程を延ばして検査だね」
何気にミランちゃんは重要な事を言ったなおい。
「その間に色々と教えてやるよ。一対一で」
姉御がニヤニヤしながら言いはなった。絶対楽しんでないか？
「激しく不安だ」
僕は心の底からそう思った。
「お姉さんが教えてア･ゲ･ルは男のロマンだろ」
姉御…それはやさしいお姉さん限定です。
