輸送戦記 第6話 交戦
姉御とミランちゃんと教官が打ち合わせ中。
「ルローネ先生とミラン先生は私と一緒に来てください。火力支援などで手伝ってもらいます。草壁、お前も来い。探知機と弾薬運搬係だ」
「アパムにはならんでしょう」
「そんだけ減らず口が叩けるのなら大丈夫だな」
姉御とミランちゃんがじっとこちらを見ている。セクシーダイナマイツなお姉さんと、下着姿（一応軽い上着ははおっている）から見つめられるのはうれしいんだが･･･なんだか目つきが怖いぞ。
全員が物陰に隠れ、待ち伏せが完了。僕のとなりには教官がいる。
「草壁、あとどれぐらいだ？」
「50mぐらいだと思います」
「夜間だから30までひきつける」
「45…40…30」
「ミラン先生、お願いします」
その瞬間、ミランちゃんの精霊魔法による照明弾代わりの「光の精霊」が飛び出し、黒装束を照らし出した。
「君たちは完全に包囲されている。降伏しな･･･」
教官の降伏勧告が終わらないうちに黒装束たちは走り出した。
同時にかなり離れているはずの正門で爆発が発生した。
畜生。黒装束が突入してきた。
PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！
隊員の発砲で黒装束のうち5人が倒れた。夜間で動く目標によく当たったな。
黒装束たちが黒で塗装した剣を抜き放った。畜生、あんな塗装をしてるって事は相手は夜間戦闘能力があるプロだ。もしかすると暗殺者かも？それ以前なんでこんなによく見えるんだ。怖いぞ。
PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！PAN！
残り5人のうち3人が倒れた。が、もう接近戦だ。
1人が教官に剣を振り下ろす。教官は小銃で剣を横から弾いてかわし、相手をぶん殴った。
もう1人は目立つ姉御とミランちゃんに向かったが、うかつにも僕に背をむけていたので、手に持っていた弾薬箱（実弾入り）を、思いっきり振って、黒装束の脳天に思いっきり叩きつけた。
少し危なかったがこっちはなんとかなった。
黒装束の損害は射殺5、負傷で捕らえられた後に自決3。捕虜2名。捕虜は僕と教官が殴り倒して昏倒させた分だ。僕たちの損害は死者0、怪我1。怪我をしたのは直接格闘戦をした教官だけだった。
こちらはこれだけの損害で終わったけれども、正門の方に火の手があがっていた。
小銃や25mmの発砲音が派手に響いている。向こうはものすごい襲撃を受けているみたいだ。
「･･･はい･･･こちらは･･･ええ、無事です。それでは連れて行きます。終ワリ」
隊員たちが警戒している中で教官が何か報告をしている。その横では縛られて猿轡までかまされた捕虜が転がされ、ごていねいに監視までついていた。
教官の報告が終わったようだ。
「しばらくここで警戒態勢」
「正門側への救援が必要なのではないでしょうか」
「向こうは確かに派手だ。が、派手なだけで突入してくる様子が無いそうだ。もしかすると陽動かもしれない。ならば向こうが助攻でこっちが主攻の可能性がある。
だから警戒するのだ。後から増援がまた来る」
まだ気が抜けないようだ。畜生。
そういえばこの弾薬箱は1つ30キロなんだけど、それをよく片手で軽々と振り回して相手に当てたな。やはり火事場の馬鹿力なのか？
それにしても姉御とミランちゃんの視線が怖い。何だろう。やっぱり姉御と呼んだのが悪かったのかな。
翌日。
結局、僕たちの方からの襲撃はあれから無く、僕たちは朝が来るのを緊張しながら待っていただけだった。後で聞いた話によると正門は囮で、何かあったときの為に騒ぎを起こして注意をひきつけ、黒装束の撤退を助けるものだったらしい。
正門の方は火球などを打ち込まれ、その後に敵の突入があるかと思われたが攻撃はあれだけだった。
警備に当たっていた隊員が最初の爆発で亡くなったらしい。南無。
2名の捕虜はあれから営倉に連れて行かれた。が、その後。
「＊どあｊｄｐを＋せｄｐｆｐしえｒｄｐ＠え～」
と、とんでもない絶叫が聞こえてきた。その前に入っていった『ふんどしエルフ』が関係あるのだろうか。色々な噂が飛び交っているが真相は営倉の闇の中。
僕以外の連中は片付けに駆り出されていた。講義や訓練が除外されて最初は歓声をあげていたが･･･
昨日の状況を説明されてからは歓声は聞こえてこなくなった。自分たちを守り、役目を果たした英霊のそばで馬鹿騒ぎをするようなやつはいなかったようだ。
そして僕は･･･
「さぁ、我慢しなくていいのよ。医務室にはもうだれも来ないのよ」
「せ、先生！ 僕は･･･」
「いらっしゃい。大人の味を教えてア・ゲ・ル」
という状況は他の連中の脳内で発生していた。
僕はあの後医務室に放り込まれて自衛隊の医官と姉御とミランちゃんによる調査を食らっていた。
なお、姉御たちは既に着替えていて、いつもの服の上に白衣を着ている。
姉御は少し荒っぽい女医さん。ミランちゃんはちっちゃくてカワイイ眼鏡っ娘研究者な感じでなかなか萌えるな～。
こんな状況でなければ。
「え～姉、もとい。ルローネ先生。これはあだなで呼んだお仕置きなんでしょーか」
姉御の指が僕の体をいろいろ触っているけど、なんだか検体をいじくる科学者な感じで全然嬉しくない。
「いいから黙ってろ」
「はい･･･」
医官による血液検査や簡易脳波計による脳波測定やらの後、姉御とミランちゃんに体をいじられていた。
合間にカルテに書き込みをし、医官や後から来た自衛隊幹部の人とひそひそ話をしながら調査を進めていたが、やっと終わったみたいだ。
僕の前に姉御が座った。何やら真剣な眼をしている。
「草壁。重大な事を告知するから気をしっかり持てよ」
「え、はい」（何だ？いきなり癌だなんて言われたらどうしよう。まさか変な寄生生物でもいるのか？）
「君は魔法使いになった」
