輸送戦記 第5話 暗闇に蠢く影
草木も眠る丑三つ時。つまりは午前2時。僕は全然眠れなかった。
同室の連中がたてる鼾がここ最近急に大きくなってしまえば眠れるものも眠れなくなってしまう。
大気汚染や人工の光がないから星の光で真昼とまではいかないが、夜なのにとても明るく見えるので
なおさら寝付けない。今日は新月だからそんなに明るくはないのだが…。
そんな夜に僕は宿舎を出て、基地内を気晴らしの散歩をしていた。
それにしても急に明るくなったな。こんなに明るかったっけ？まあいいや。ぐるっと一周してからまた戻ろう。
と散歩を始めて当直詰め所のそばを通り過ぎたらいきなり捕まった。すぐに放してくれたけど。まー真夜中にうろうろしていれば『職務質問』を食らう事が日本ではあるし。結局、顔見知りの隊員がいたので説教代わりに荷物の運搬を手伝う事になった。
「あーちょうど良い。A-10の倉庫まで持っていくのを手伝ってくれ。俺も手伝う」
「それが交換条件ですか？」
「それじゃあ説教を聴くかい？」
「手伝わせていただきます」
2人で世間話（ハート○ン軍曹みたいな教官は実はかなりの恐妻家だとか、姉御とミランちゃんのファンクラブが結成されたとか）をしながら歩いているうちに気がついた。
「あれ？夜間訓練か何かですか？」
怪しい影が見える。
「いや。そんな予定はねーぞ」
「だって、グラウンドのずっと向こうに黒装束な人が10人ぐらい見えますけど」
隊員がマジな顔になってよく目を凝らす。
「…よく見えたな。俺だとぼんやりとしか見えんぞ。でも誰かが動いているように見えるな…」
なんだかやばい事になりそうだ。
隊員が無線で会話中
「当直07より当直室へ。現在G-5地点。第1グラウンド付近で侵入者を5名発見。送レ」
「当直室より07。触接は可能か。送レ」
「07より当直室へ。同行中の草壁なら見える。だが暗視装置が必要と認む。送レ」
「当直室より07。待機の連中をまわす。それまで触接を続けろ。送レ」
「07より当直室へ。了解。触接を継続する。終ワリ」
そうして無線機をしまった。
「草壁、聞いたな。それじゃあ早速後をつけるぞ」
「訓練未了。しかも民間人を使いますか、ふつー」
「100回の訓練よりも1回の実戦と良く聞くぜ」
「訓練100回の方が損害無しで錬度が上がって良いと聞きましたけど」
「…しょうがないだろ草壁。使えるものは親でも上司でも使えさ。悲しいけどこれって戦争なのよね～」
「そんな事言う人嫌いです」
「んな事を言ってないで行くぞ」
「休日が欲しい」
「知らないのか？休日は非常事態のベルで取り消しになると相場が決まっているもんだ」
増援が10人＋2人
10人は『ハートマ○軍曹みたいな』教官直率の陸自隊員。残りの2人は姉御とミランちゃん。
問題は姉御とミランちゃんの格好だったりする。
「あの～姉御たちのその服は…」
「寝ていた所を叩き起こされたんだからしょうがないでしょ」
確かにそうだが…背が高くて、セクシーダイナマイツッッッ（死語）なダークエルフのお姉さんが『少女趣味なパジャマ』の上に軽い上着を着ているだけというのは衝撃的です。これでクマのぬいぐるみを抱えていたら立派な少女趣味です…部屋でやってそうだな。
ミランちゃんはかなり透ける素材のローブ？に黒のランジェリー！ 雪のように白いエルフに黒は美しすぎます。しかもあのランジェリーとかは全部絹だぞ。高級品なのは間違いない。光沢が違う…
と下着談義はこのへんにする。
侵入者は10人。それ以外は見つからなかった。教官の意見ではどう見てもプロで、動きが違うらしい。
プロなら動きが読みやすいようだが。
僕がこっそりと侵入者を監視しているうちに、教官が当直司令と作戦についての打ち合わせがおわったらしい。どうやら姉御たちの支援を受けた待ち伏せのようだ。…ならば交戦までの部隊の眼は僕かよ。畜生。責任重大じゃないか。
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