輸送戦記 第4話 えっ、銃ですか？ ええっ、魔法ですか？
今日も座学と訓練。だけど今回は射撃訓練が組み込まれていた。
僕たちみたいな素人に銃はまずいのではないかと思ったが、渡されたのはショットガン だった。自衛用らしい。
ハート○ン軍曹な教官の説明によれば…
「貴様らに小銃を渡しても当たらん。遠距離は弾の無駄。だが近距離でならなんとかなるかもしれない。できればラクで面制圧なものが望ましい。なので拳銃は無し。SMG（サブマシンガン）も扱いが面倒。ショットガンなら比較的なんとかなる」
かららしい。
そんな事を思い出しているうちに、教官からの説明が始まった。
「お前らが乗り込む車両にはこいつが必ず1丁ある。そいつを扱えなければ死体袋行きだ。これからの説明を耳をかっぽじって聞け！」
「Sir Yes Sir！」
教わったのは装填や発砲などの銃使用方法と、普通のときの銃取り扱い方法の2つだけ。この手の教育に必ずある分解整備は「自衛隊員に任せる」事を前提にした簡易的なものだった。
それ以上教えたいが時間が足りない人手が足りないらしい。 とまあ説明はこのぐらいにして、どんな訓練だったかと言うと…
「どんな時でも銃口を味方に向けるな！このピーナッツ野郎！」
「ショットガンでチャンバラをやるな！このクソ野郎！」
「勝手にウンチクをたれるな！しかも間違った奴を！」
「ターミネーター2みたいに片手で排莢すんな！」
「撃つ時はもっと腰を据えて撃て！」
「銃口を覗くなこのオカマ野郎！」
「銃を粗末に扱うな！」
「勝手に弾をバラすな！」
「勝手に銃をバラすな！」
…教官の中の人も大変だな…
結局 「素人に銃を渡すとこうなる」の見本みたいなものだった。
その中で僕は文句も言わず、余計なことをしなかった。それは賢明だった。なぜなら…
「俺に怒鳴られた奴。お前にお前に、そこのグループ全員。腕立て伏せ500回×3 セット」
指名された面々は「何だよそれぐらいで～」と言いたげな表情。それを見て、教官がまた吼えた。
「何を言ってやがるこの豚娘ども！この研修期間中はお前らは俺の指揮下にある。 つまりお前らの空気しか入っていない頭からケツの毛まで全て俺のもんだ！」
「そ、それはつまり」
「弾除けに使おうが標的に使おうが俺の勝手だ！」
そのあまりの内容と迫力に全員圧倒されてしまった。さすがはFMJ風教官トーク。ステキですw
とまぁ出だしは激しく不安になる状況だったが、罵られた連中はもれなく腕立て伏せ500回×3 セットをプレゼントされたので他の連中は気をつけるようになった。最初より多少はマ シになった。
それに僕も含めた全員がこう思った。
「銃取り扱いは慎重に」
暴発事故は少なくなりそうだ。
そんなこんなで射撃訓練の終わりごろ、意外な人物たちが射撃訓練場にいる僕たちの所に来た。
ダークエルフのルローネ先生（錬金術魔法担当）と、ロリな白エルフのミラン先生（召喚魔法担当）の2人組みだ。まぁこの2人は公私にわたって仲が良く、一緒にいるのが当たり前な感じだ。まぁそのせいでレズ疑惑が出たが。
そのルローネ先生とミラン先生が教官と少し話しをしたと思ったら、教官が僕たちをまた集めた。
「喜べこのクソ共！ルローネ先生とミラン先生が魔法の恐ろしさを教えてくれるそうだ 。それではルローネ先生、ミラン先生、お願いします」
そう言うと教官の代わりにルローネ先生とミラン先生が前に出た。なお、2人とも迷彩服。
うーん。ルローネ先生はキッチリ着こんでいて、いわゆる『カッコいい系美人』だから凛々しくていい。姉御属性な連中にはもうたまらんのじゃないだろうか？
ミラン先生は…え～多分、迷彩服のサイズがあうものが無かったんじゃないかな？ なんとなく『小中学生が無理してサイズが違う服を着ている』みたいなあのダブダブ感がまた萌えるんじゃないだろうか？
そんな事を考えているうちに、先生たちの話が始まった。
「それでは私ことルローネがお前らに魔法の恐ろしさを『教育』してやる」
「ルローネ。あなたそのセリフを言いたくてうずうずしていたでしょ」
ナイスツッコミですミラン先生！おかげでみんな吹き出しそうです。それ以前に姉御なルローネ先生は、小林源文先生も読了ですかw
「…それでは全員あの標的に注目」
ルローネ先生はツッコミを華麗にスルーすると、50m先の標的に向かって呪文の詠唱を始めた。
「天空に満ちる…1つになり…風を巻き込んで…渦巻くもの…」
なんだか長い。
「集まりしもの、汝を光と共に開放する！」
ルローネ先生が呪文詠唱を終えたその瞬間…
標的周辺がプラズマ化した。
全員が内心ビビったと書いておこう。正直、僕は腰が抜けかけた。
こう書くと僕たちがかなりのヘタレのように見える（本当にそうかもしれないが）が、姉御が使用した魔法は「自分のレベルと能力で使える火系最強魔法」だったそうだ。
結果なんですが…ルローネ先生、教育目的としては最高だと思いますけど、標的を含めた半径10 メートルをクレーターにしてしまうのはやりすぎだと思います。
ルローネ先生もルローネ先生だが、ミラン先生もこちらの予想の斜め上を行った。当然すごい勢いで
「わたしは今から火の精霊さんを使います」
何か中学生の発表みたいだな～と僕はその時そう思っていた。
「ではいきまーす。サラマンダーちゃんお願い」
ミラン先生がそう言った瞬間、僕たちの目の前を炎の川が流れた。
手順としては…
召喚済み精霊（この場合はサラマンダー）を準備。
↓
射撃訓練場でサラマンダーを実体化。
↓
サラマンダーに命令して火炎放射。
を実行しただけなのだが…見ると聞くとでは大違い。初めて生で見た火の精霊・サラマンダーとその火炎放射のド迫力にまた腰を抜かしかけた。
他のみんなも同じような状態だったが、誰かがいち早く復活してつぶやいた。
「あれ、何か範囲が広すぎないか？」
「そう思うか。やっぱり」
「お前もそう思うか」
みんなそう思っていたらしい。
結果を言うと、ミラン先生は火炎放射の範囲を「ちょっと」（本人談）大きく取りすぎ て火事を誘発しかけてしまったのだ。当然と言うかなんというか皆で消火活動をする 破目になったのは言うまでもない。
今回の教訓。科学があるからと言って魔法を舐めるのはやめましょう。
なお、姉御もミランﾀﾝもその後に司令に怒られていた。もっとも魔力の使いすぎでぼんやりしてしまい上の空だったようだが。
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